
水戸大神楽について
ごあいさつ
水戸大神楽の継承者として
水戸藩徳川家御用神楽 15代家元 柳貴家 勝蔵
水戸の大神楽は、江戸時代以前より有り、又江戸時代には水戸徳川家の御用につき、水戸藩内を御祓い巡回をいたしました。私は現在15代家元として、水戸の大神楽の伝統を守っております。
郷土芸能といいましても、職業としてその伝統を守るのは大変です。まず大神楽の芸能である技術を身に着けなければなりません。これは毎日毎日の練習で、切磋琢磨しながら覚えます。昔なら「苦労は買ってでもしろ」といいましたが、今は「苦労は売ってでもしない」というのが今の風潮です。そういうわけで全国に分布していた大神楽も、跡継ぎの方達が会社員等になり、次々に廃業してしまいました。今わずかに残っているのは、水戸、会津、伊勢、出雲、東京に数組あるだけという現状です。この先減ってしまうのは時間の問題です。大神楽とは違いますがあの有名な新潟の角兵衛獅子も、笛を吹く人が亡くなり、きちんとした囃しができないという事を聞きました。
一度無くなった専業者による伝統芸能を復活させるのは、不可能です。水戸系の大神楽も現在直面している問題です。これには芸を身につける苦労や経済的な問題もあるわけです。私は、多角経営でなんとかカバーしておりますが、芸を覚えながら後継者を育成するのは、並大抵ではありません。大神楽は庶民の中から生まれ、庶民と共に歩み、喜怒哀楽を分かち合い、何よりも庶民の無事息災、家運繫栄などの幸福を願うものです。私は庶民と共に生きつづける民俗芸能として水戸大神楽のすばらしさを伝承していきたいと思っています。
大神楽の親方として尊敬する父の意志を引き継ぎ又、私に大神楽の将来を託した先代親方たちのためにも、四百年の歴史をもつ水戸大神楽15代家元として、伝統の護持、発展、継承は、私の人生を賭けての使命として頑張る所存でおりますので、何卒相変わりませぬ御贔屓、お引き立てのほどをお願い申し上げまして御挨拶とさせて頂きます。
演目紹介

獅子舞
頭を噛むことにより、身についた罪や穢れを祓って「無病息災」を祈祷執行いたします。

鍾馗舞
「厄年の厄払い」「新築祝い」「子供のお祝い」など節目の時に行う特別な「祈祷舞」です。

恵比寿・大黒舞
「家運繁栄」「五穀豊穣」「大漁満足」を祈る「祝祷舞」です。祝祷舞は他にも「おかめ様」などたくさん伝わっております。

曲芸
江戸時代より伝わる大神楽の曲芸は、ジャグリングなどの芸とは違い「祓い」と「祝い」を含む芸であり、目だたさを強調する芸でもあります。水戸大神楽には、たくさんの曲芸が伝わっております。

即興紙工術
(紙切り)
寄席芸。紙に鋏を入れて絵などを即興で切り抜く芸。鳴り物に合わせて切ります。水戸大神楽(柳貴家)では戦後すぐに取り入れました。二代目正楽の芸界の兄弟分であった花房流家元の花房一蝶(柳亭左楽門人、柳亭紙楽、のちに小倉一晁)がお祓い廻りに同行して演じ始めました。その後「小沢柳」が手伝い、現在は柳貴家勝蔵が花房流の権利を託され継承して います。(紙切り芸名・花房正蝶のちに花房紙楽)